イタリアに13年在住し工房職人になるも、料理好きが高じて日本でイタリア料理店開業
2014年 06月 20日
本間大さん(41歳)(お隣に写っているのは奥様)。
東京・茅場町のイタリア料理店「La cornice(ラ・コルニーチェ)」のオーナーシェフ。
2008年に開業したのだが、それまでシェフの経験はまったくなかったという。
イタリアに13年間、在住し、工房職人&デザイナーとして活躍していた人だ。
もともとイタリアに住むつもりはなかったという。
日本で美術系の大学に行ったものの、つまらなくなり中退。
デザインの勉強をしに、イタリアに留学に出掛けた。
その理由をこんな風に話してくれた。
「東京は僕の故郷ですが、故郷なのにあまり愛着が持てなかった。
それは街並みがどんどん変わっていってしまうから。
ところがイタリアは古い街並みがそのまま残されている。
いいデザインのものはずっと残ると思っていて、
空間デザインに興味があった僕にとって、
景色が変わってしまう東京で勉強するより、
美しい街並みが残されたイタリアで勉強したいと思った」
22歳。はじめの海外。はじめの一人暮らし。
着いた当日、古い街並みが残された素晴らしさもさることながら、
町で買った生ハムのおいしさに感動した。
「今まで日本で何を食べていたんだろう。
こんなにおいしいハムがあるなんて!」
2年間、デザインの専門学校に通った。
卒業した時に卒業証書をもらってふと疑問に感じた。
「僕はこの卒業証書という紙切れをもらうためだけでに、
わざわざイタリアに勉強しにきたのだろうか?
言葉も話せるようになり、せっかくイタリアに慣れてきた。
もっとイタリアの文化を知りたい」
そんな思いから、このままイタリアにいて仕事をすることに決めた。
とはいえ労働ビザを取るのは大変。
ましてや失業率が高いイタリア。
そんな中、わざわざ日本人を雇ってくれるところなどそうそうない。
ただ通っていた専門学校の先生の縁で、建設設計事務所で働くことができた。
でもはじめは見習い。
生活費を稼ぐため、イタリアの有名レストランでウエイターとしてアルバイトしながら、
2年間を過ごした。
その後、腕を見込まれ、工房で働くことに。
単にデザインをするだけでなく、実際に物作りをする職人も兼ねていた。
家具だけといった単品だけでなく、お店まるごと自宅まるごと、
デザインと内装を請け負うことも多くなった。
工房で6年間働いた後、フリーの職人&デザイナーとして、
仕事をするようになり、イタリアの生活は毎日が楽しかったという。
転機が訪れたのは2005年。32歳のこと。
イタリアで今の妻と出会い、結婚。
子供が生まれることになったので、日本に帰ろうと決めた。
「イタリアの生活は楽しかった。でも子供は母国日本で育てたかった」
職人&デザイナーとして順風満帆な生活をしていたにもかかわらず、
「これからは妻と子供と生きる第二の人生をスタートさせたい」と考え、
2006年に帰国した。
さて、仕事は何をしよう?
「妻と二人でずっとできる仕事がいいと考えていました」という本間さんは、
都内でイタリア料理店を開業することに決めた。
シェフの経験はない。
でもイタリアに行って様々なおいしいものに巡り合えた感動を、
日本にももっと広めたいという強い想いがあった。
シェフの経験はなかったが、イタリア在住時代は、
ほぼ毎日、自分で市場に出掛けて材料を仕入れ、
自分で料理を作っていたほど料理好きだった。
「市場に行くと日本にはない素材もあり、
店の人に聞くとレシピを教えてくれて、作ってみたりもした」
時には友人を招いてイタリア人が作った料理とどっちがうまいか、
「料理対決」もよくやっていたという。
ただ飲食店を経営したことなどないので、はじめからうまくいくとは考えず、
資金を十分用意し、ゆっくり店を育てていこうと考えた。
念願の店を2008年8月にオープン。
客席18席の小さな店だが、いろいろな苦労をしながら、
生パスタを売りに家族が食べていけるぐらいの稼ぎにはなるようになった。
イタリアのおいしい食材をぜひ日本人にもということで、
水牛のモッツァッレラをナポリから空輸することもある。
すぐに売り切れてしまうが、常連客が楽しみにしてくれてるという。
ちなみに私も数年前にイタリアのアマルフィのレストランで、
はじめて水牛のモッツァッレラを食べたが、
まるでお豆腐のようなぷりんぷりんの食感のモッツァッレラに、
感動したことを覚えている。実においしかった。
オフィス街で昔から飲食店を営む人に本間さんが話を聞くと、
「昔のランチはカーニバルだった。
工夫しなくてもお客さんが大行列になった」
でも今はそういう時代ではなくなった。
昔と違って会社員の働き方も変わり、
一生、同じ会社に勤める人が昔より減っているため、
ランチにずっと店に来てくれる固定客が多いわけではない。
「でも逆に会社を移って違う場所に通っている人が、
夜に店に来てくれたりする」とむしろ時代の変化を好意的に受け止めている。
今後は害獣として駆除されてしまい、
ただ捨てられてしまうシカやイノシシを使った、
ジビエ(狩猟でとった野生鳥獣の食肉)料理も出していきたいという。
「フィレンツェにいた時はイノシシの煮込み料理や、
イノシシのミートソースなんかもとてもおいしかったので」
また今までネットを使ってお店を宣伝することに抵抗があった。
ただ最近の時代の流れを感じ、自分で無料でできるブログとフェイスブックをはじめて、
入荷情報などお店の情報発信をするようにしたところ、
リピートしてくれるお客さんも増えたという。
「いつか日本にリトルイタリアを作りたい。
そこの一角だけは古い街並みで、
教会があり、学校があり、市場があり、
イタリア本場さながらの食材や店が立ち並んでいるような町を」
イタリアに魅せられて、イタリアに13年間住んでいた経験を活かし、
イタリアの食を中心に、イタリアの良さを、もっと多くの人に知ってほしい。
そんな思いから、日本で家族とともに暮らしながら、
拡大志向ではなく、等身大のお店サイズを維持しながら、
いろんなことを仕掛けていきたいと話してくれた。
(取材日:2014年6月19日)
※ちなみにこのお店はブログ読者の方が、
「私がおもしろい生き方や働き方をしている人を紹介してほしい」
という記事を見て、つないでくれました。
ありがとうございました。
・「La cornice(ラ・コルニーチェ)」(食べログ)
http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130203/13060496/
・お店のブログ
http://la-cornice.jugem.jp/
・生き方・働き方インタビュー
http://www.kasako.com/life.html
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