会社員から書道家に転身!パラレルキャリアとネットが切り開いた「好きを仕事に」~書道家・矢部澄翔さん
2014年 08月 19日
「まさか書道が仕事になるとは思ってもみなかった」
そう語るのは、書道家の矢部澄翔(ちょうしょう)さん(37歳)。
テレビや雑誌の題字ほか、斬新な書道パフォーマンスで、
海外イベントにも出演している活躍中の書道家さんなのだが、
もともと書道家になろうとは思わず、どこにでもいる普通の会社員生活を送っていた。
8年間の会社員生活からどうして書道家になれたのか、話を聞いた。
(取材日:2014年8月18日)
1:リストラ、会社の不祥事など8年間で5社を転々
書道は6歳の時から学んでいた。
22歳で書道師範の資格も取得した。
でも書道を仕事にしようとは思ったこともなければ、
できるとも思っていなかった。
ただ趣味で続けていた。
「将来、子供が生まれて会社で働けなくなった時に、
おこづかい稼ぎ程度で書道教室でもやれればいいかな」
ぐらいの気持ちは大学生の時にあったという。
趣味が書道といっても、書道だけにのめりこんでたわけではない。
高校時代はほぼ毎日練習がある吹奏楽部に熱中し、
大学はファッション関係の勉強を専門にしていた。
いざ就職活動をする頃になると、世は就職氷河期の真っ只中。
地元から近いところでアパレル関係なら、
どこでもいいかなと思い、軽い気持ちで、
埼玉のユニホーム会社を受けたら採用された。
とりあえず受かったからいいかと1社で就職活動をやめ、
この会社に新卒で入社した。
のんびりとしたいい会社ではあったが、
ここに一生いてもアパレル関係でキャリアステップは望めそうにない。
社内でちょっとしたごたごたもあり、同期で入社した社員が次々と辞めていく。
「私も辞めたい」。入社3ヵ月でそう思ったが、
もう少しがんばってみようとか、会社を辞めるなんて無謀ではないかと、
結局、辞めるまでに1年半かかった。
さてどうしよう。
就職活動は1社しかしたことがないのに、
転職活動がまともにできるのか。
とりあえず面接の練習にと、転職情報誌で見つけた、
リクルートに面接に行くと、なんと採用に!
習い事の情報誌の広告制作をする部署に行くことになり、
取引先には書道の学校もあった。
こんなところで書道に出会うなんて。
取材に同行することもあったが、
若くして書道教室を運営する人にも出会った。
書道教室は若い人がやってはいけないものだと、
矢部さんは勝手に思い込んでいた。
長年キャリアを積んだそれなりの年齢の人がやるもんだと。
でも若くして書道教室をしている人を見るにつれて、
自分の書道熱が盛り上がってきた。
「若い人でも書道教室をしてもいいんだ!
私にもできるかもしれない!」と。
リクルートの仕事は楽しかった。
みんな前向きに仕事に取組み、雰囲気もよかった。
しかし矢部さんがしていた営業アシスタントの仕事が、
2年後にシステム化することになり、人が必要なくなった。
別部署や営業職の転身もできたが、これをいい機会に、
書道にも力を入れながら、仕事ができる職場に転身しようと、
リクルートを約3年で退職することにした。
その後、広告代理店や飛び込み営業の仕事を経て、
通販会社の広告制作仕事に転職。
ここは休みも多く、定時にも帰れるいい職場。
空いた時間を書道に費やすようになった。
2004年12月頃から、休日に書道教室を始めることに。
いつか書道で独立したいと、会社員のかたわら、
副業も行うパラレルキャリアを実践し始めた。
そんなある時、矢部さんの「書道観」を覆される出来事があった。
ある書道家の書道パフォーマンスだ。
書道の世界には師匠が弟子にお手本を見せるための、
デモンストレーションのようなものは昔からあった。
でもいわゆる今の書道パフォーマンスのように、
一般のお客さんを呼んで楽しませる、
エンターテイメント性の高いパフォーマンスをするという発想はなかった。
「私もいつかやってみたい」
矢部さんの書道熱に新たな火がついた。
ますます書道への気持ちが高まっていく中、
会社にいても書道のことを考えてばかり。
書道教室オープンにあわせて始めた、
ホームページやブログの更新が気になって仕方がない。
そんな矢先に勤めていた通販会社に不祥事があった。
その影響を受け、矢部さんのボーナスが全カットに。
「ボーナスを次の書道の展覧会費用にあてるはずだったのに・・・」
この時、感じたのはサラリーマンであることのリスク。
自分の仕事うんぬんに関係なく、
会社の事情でボーナスがカットされてしまうこともある。
リクルート時代は仕事がシステムに置き換わるということで、
会社を辞めることにもなった。
会社員は安泰ではない。
自分とは関係のない要因で、
職を失ったり、給料が減らされてしまう。
どうせリスクを負うのなら、自分で独立した方がいいのではないか。
会社を辞めて書道で独立するか否か。
そんな迷いを抱いていた最中に、
ある書家の展示会を見て衝撃を受けた。
「書を見て感動し、心に響いたのはこの時がはじめて」
と矢部さんは語る。
矢部さんがこれまでやってきた書道といえば、
いかにうまく字を書くかということばかりだった。
でもこの展示を見て心を動かされたのは、
字がうまいとか下手とかではなく、
展示も斬新で、書で表現をしていたこと。
自分もこんな書を書いていきたい。
そんな思いを強く抱いた。
2006年、約3年勤めた通販会社を辞めて書道家として独立することを決心した。
2:ネットのおかげで仕事が舞い込む!
会社員時代から書道教室は運営していたものの
休日限定のため、それほど生徒もおらず、
独立してすぐに食べていけるだけの収入を得ることはできなかった。
「とりあえずやりたいことは全部やってみる。
できることは全部やってみる。後からすることは絞ればいい」
そんなスタンスで独立1年目は、念願の書道パフォーマンスに挑戦したり、
商品パッケージの書を書いたり、いろんなことにトライした。
結果、その仕事ぶりを見た方から仕事がくるように。
また、ホームページやブログ、SNSの更新にも力を入れた結果、
ネットを読んで考えに共感してくれた方から、
仕事の依頼が舞い込んできたり、仕事の紹介をしてくれるようになった。
「会社員の時はメディア出演などの仕事は、
立場的に受けれないものもあり、
会社員で副業することの制約を感じることも多かった。
でも独立したおかげでいろんな仕事の依頼を受けられるようになった」
独立してから1~2年過ぎると、会社員時代の給料並みに稼げるようになった。
「私から営業したことは一切ない」と矢部さんはいう。
ホームページ、ブログ、SNS経由がほとんど。
もしくは人の紹介。口コミ。
仕事を依頼してくれた方がリピーターになってくれること。
こうして営業することなく、仕事を順調に拡大させた。
なぜこうもスムーズに独立できたのか。
それは今まで書道とはまったく関係のないことをやってきたからだという。
「私の書道パフォーマンスはただ字を書くだけでなく、
音楽や演出や着る服も自分でデザインするなど、
自分でステージを総合演出できることが他の人とは違う強みになっています。
こうしたことができるのは、高校時代に吹奏楽部でマーチングバンドをしていて、
行進の仕方、動き方、見せ方などを実地でやった経験があることと、
ファッション専攻の大学時代に自分で服をデザインしたり、
大学の授業でファッションショーの企画やモデルをした経験があるからです」
これまで自分がやってきた経験をフルに活かして、
単なる書道家にはできない、
オリジナリティあふれるパフォーマンスを実現させた。
「リクルート自体は広告営業のアシスタントをしていて、
取引先は塾や習い事の教室ばかり。
そこで生徒募集の集客の提案や広告制作の仕事をしていたので、
自分が書道教室をする時にも集客や広告制作に苦労しなかった」という。
「また広告代理店にいたり、通販会社で広告制作の仕事をしていたので、
企業の広告仕事にも慣れていた。
このためロゴの仕事、商品パッケージの仕事、
企業内のイベントでのパフォーマンスなど、
企業相手の仕事もスムーズにできた」と話す。
書道とは一見関係のないキャリアが、
独立した後にすべて役に立っているのだ。
3:自費でも海外イベントに積極参加
矢部さんのユニークな書道パフォーマンスに魅せられた人が多く、
見た人のつながりから、海外イベントのオファーもあった。
はじめの頃はオファーといっても自費参加。
旅費もかかるし、出演料ももちろんなく、
しかも行っている間は他の仕事はできなくなってしまう。
「でもこんな経験はめったにできない。
それに何より海外のイベントに出演したことは、
自分の活動の宣伝にもなる。
他の人と同じことをやっていてはダメ。
与えられたチャンスを活かしたい」
独立した1年目、スペインの世界遺産の街サラマンカでの、
JAPAN WEEKのイベントに呼ばれた。
劇場のオープニングで書道パフォーマンスを行ったところ、
地元の新聞数紙が一面に写真を載せてくれたという。
はじめは自費でも実績作りになる。
自費でも先行投資とわりきって活動をした結果、
こうした海外での活動が話題となり、日本での仕事の依頼が増えたり、
海外でのオファーも旅費や出演料が出る仕事も増えてきた。
こうして矢部さんは書道家としての仕事を広げ、
現在は、書道教室、パフォーマンス、ロゴデザイン、題字、
講演、ワークショップ、海外活動など、活躍の幅をどんどん広げている。
今は、生まれ育った小江戸と呼ばれる埼玉県川越市で、
書道教室を行いつつ、川越から世界に発信する活動も、
地元の人たちと協力して行っている。
・・・・・・
どこにでもいる会社員が書道家として独立し、
海外からオファーを受けるようにまでなる。
書道は6歳の頃から習っていたとはいえ、
単にうまいだけでこの仕事ができるわけではない。
矢部さんの独立成功の要因は、これまで様々なキャリアを積み、
それを独立後、すべて活かしていることと、
ネットの力をフル活用したことにあるのではないか。
矢部さんの独立する過程は、
私のこれまでのキャリアとだぶるところが非常に多い。
私も会社員時代を長らく経験し、
そこでの経験を独立後に活かしていること。
パラレルキャリアで会社員時代から個人の仕事を始めたこと。
ネットの力を活用して仕事をとってきていること。
だから今、会社員だからといって悲観する必要はない。
会社員時代の経験は関係ないように見えて、
好きなことを仕事にする上で、独立して仕事をする上で、
非常に役立つ経験になる。
矢部さんのようにネットを活用し、パラレルキャリアをしながら、
独立機会をうかがうという方法が、
好きを仕事にする成功への近道ではないかと思う。
ちなみに矢部さんと知り合ったのは、
私のクリエイターEXPO出展の記事を見てくれたのがきっかけ。
そこから私のホームページに飛んだところ、
「川越高校出身」とプロフィールに書かれていたことから、
矢部さんの地元で「川高出身なんだ!」と親近感を持っていただき、
メールのやりとりから取材に発展した。
ネットでのセルフブランディングは、戦略的なプロフィールが大事。
普通は大学から卒業歴を書くプロフィールに、
敢えて出身高校も書いてあることで、これまで何人ものの人とつながったことか!
・矢部さんホームページ
http://www.yabe-chosho.com/
・9/14、15に行われる秩父映画祭のノミネート作品
「テンプル・ナンバー・ゼロ」に、
矢部さんが出演・題字を手がけているそうです!
http://www.chichibufilmfestival.com/program.html#8
・生き方・働き方インタビュー
http://www.kasako.com/life1.html
<お知らせ>
・旅写真がうまくなる秘訣を教えます!
9/20(土)に旅写真家・三井昌志さん&かさこコラボ講演&懇親会開催!
http://kasakoblog.exblog.jp/22264232/
・9/20土に個人最強の営業ツール・セルフマガジンの作り方講座開催
http://kasakoblog.exblog.jp/22271274/
・10/21スタート。かさこ塾四期生募集開始。20名限定
http://www.sanctuarybooks.jp/eventblog/index.php?e=739
・セルフマガジン「かさこマガジン4」無料配布!3500部増刷しました!
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