23歳で農家として独立起業!次々と新たな“種”をまき、新宿伊勢丹にも野菜提供~柴海祐也さんインタビュー
2014年 10月 02日
職業として考えた場合、これほどしんどいものはない。
重労働。長時間労働。薄利。
さらには自分ではどうにもできない天候リスクにより、
その年の収穫=売上は大きく変わってしまう。
そんな大変な農業を「だからこそ楽しい!」と嬉々として仕事をしているのが、
千葉県印西市にある柴海農園の柴海(しばかい)祐也さん(28歳)だ。
柴海さんはなんと23歳で農家として起業。
周囲からは「農業なんかで食えるわけがない」と言われたが、
奥さんとスタッフの3人という少数ながら、
農薬、化学肥料を使わず、約60品目の野菜を栽培・販売していている。
近隣家庭への野菜セットの宅配、
都内のこだわり八百屋さんやレストランへの野菜提供ほか、
なんと新宿伊勢丹でも柴海農園の野菜を販売。
さらには砂糖を使わない甘糀ジャムの加工品販売を行うなど、
様々な事業展開を行っている。
28歳の若き農園経営者・柴海さんがどうやって、
ここまで事業展開を行ってきたのか話を聞いた。
(取材日:2014年9月30日)
1:大学時代の畑サークルで農業に魅力!
柴海さんの両親はトマト栽培を行う農家。
親の家業を継ごうと思ったことはなかったが、
高校卒業の進路に東京農業大学進学を決め、
なんとなく農業の方に足を踏み入れた。
しかし大学の授業そっちのけで柴海さんがハマったのが畑サークル。
東京の稲城市の農家に2年間、住み込みで畑をやる、畑サークルの管理人になった。
朝、農作業をしてから大学に行き、また帰ってから農作業をする生活。
「自分で野菜を育てて、それを自分で販売するという、
シンプルな目に見える形の畑仕事が何より楽しかった」という。
2年間で大学生活を終えると、約半年間は地方の農家を働きながら回った。
長野や愛知で数か月間、住み込みバイトをしながら農業を学んだり、
デパ地下の八百屋のバイトをしたりするなど、
とにかくいろんな経験を積もうとフリーター生活をしていた。
2:ハードな労働の農家レストラン正社員の経験と挫折
しかしいつまでもフリーター生活をしているわけにはいかない。
20歳で結婚していたこともあり、農業関連で正社員で働こうと考え、
都内の農家レストランを展開する企業に就職した。
ここで3年間、勤めるのだが、毎日がとにかくハード。
野菜に詳しいことから、レストランで顧客や店員に野菜について教えるほか、
レストランの立ち上げ準備や店舗運営など様々な仕事をした。
睡眠時間は毎日3時間程度で、毎日深夜に帰ってきた。
それでもはじめは野菜に関われる仕事が多かったからよかったものの、
入社3年目で店長になることに。
22歳の若者にもかかわらず、はるか年上の人たちを面接してアルバイトを採用したり、
売上管理やら労務管理やらメニュー考案やら様々な仕事に携わった。
しかし柴海さんはわずか4カ月で店長から降格に。
マネジメント的な仕事があまりできず、店長を降ろされてしまったのだ。
しかも柴海さんの後釜になった店長は自分より年下の女性。
悔しいながらも、つらくなって会社を辞めてしまった。
3:親の農業を継がずに自分で畑をスタート
会社を辞めてしまい、とりあえず実家に戻ることに。
さあ何の仕事をしようかと考えた時、大学時代に楽しかった畑サークルのことを思い出した。
親のトマト栽培を継ぐことなく、近所に畑を借りて野菜を植えはじめた。
2009年のこと。まだ柴海さんは23歳の若さだ。
しかしはじめの1~2年は思ったように野菜が育たない。収穫が思わしくない。
特にポリシーがあって無農薬にこだわっていたわけではないが、
趣味ではなく生業として無農薬で野菜栽培することの難しさを痛感。
「でも他の人でもできている人がいるんだから無農薬でできるはず」
再び様々な農家を訪ね歩いて技術を学ばせてもらったり、
インターネットで調べて農業技術を学び、徐々に収穫量を上げていった。
3:野菜セット販売で仕事が軌道に
農業をはじめて1年後。
収穫も比較的安定してきたので、
今までは農産物直売所での販売が中心だったが、
さらに安定的な収入を得られる販売方法はないかと考えたのが、
野菜セットの販売&宅配だ。
定期的に1週間分の野菜を自宅まで届けて販売する。
消費者にとっては生産者から直に野菜を購入できるメリットがあり、
スーパーで野菜を買い物しなくても済む。
農家側にとっては定期的な安定収入になるのと、
その時に旬な野菜をおまかせで届けられるので、
野菜単品売りの様々な変動リスクが避けられる。
柴海農園のそばは続々と住宅が建設される新興住宅街。
1軒1軒ポスティングを行ったところ反響がよく、
多くの人から野菜セットの注文が入ることに。
その後は宣伝しなくても口コミやホームページなどから注文が入り、
今でも安定した収益源となっている。
さらに違った販路を開拓するため、
都内の小規模な八百屋さんやレストランとの取引も始めることに。
小規模な八百屋さんやレストランは、
珍しい野菜や無農薬などこだわった野菜を少量欲しいというニーズがあり、
小規模な畑の柴海農園のようなところから仕入れられると便利というメリットがある。
こうしてBtoCだけでなくBtoBの販路も確保した。
2014年からは新宿伊勢丹で若手生産者を応援する企画に出展したのを契機に、
新宿伊勢丹でも柴海農園の野菜を売れることになった。
手間はかかるものの、こうしたブランド力のある有名店で野菜を販売していることは、
農園にとってはいい宣伝効果や信用力アップにつながっているという。
4:野菜のロスをなくすために加工品販売も開始
何年たっても、日々、農業技術は勉強中。
それでも形や見た目の悪い野菜などがどうしてもロスになってしまう。
「野菜のロスを有効活用するには加工品の販売ができるのが理想的」と、
常々、柴海さんは考えていた。
大学時代に住み込んだ農家さんが、
旦那さんが畑仕事で、奥さんが加工品販売担当を行っており、
これが家族経営の農家の理想的な形だと思っていたからだ。
しかし加工品を一定量製造するには場所が必要。
2013年夏に安くて借りられるいい物件が見つかり、そこを加工品の製造所にすることに。
加工品はこれまで様々な商品開発を行ってきた。
人参ジャムやさつまいもジャムなどいろんな種類がある野菜のジャムシリーズ。
野菜を漬けこんだピクルスシリーズ。
料理に使える野菜のパテシリーズ。
加工品の中でも人気なのが甘糀(あまこうじ)ジャムシリーズ。
栽培しているお米を使い、糀とともに約20時間かけて糖化し、
1時間煮詰めてジャムを作っている。
砂糖を一切使わないのに甘いジャム!
無農薬のお米を使って糀の力で甘さを引き出したジャムなので、
栄養補給にもよく、小さな子どもにも食べさせやすい。
この甘糀ジャムがテレビ番組の「ぶらり途中下車の旅」に紹介され大反響となった。
柴海さんから教えてもらった、甘糀ジャムと味噌とマヨネーズをまぜて、
野菜ディップソースにして、柴海さんの生野菜をつけて食べたら実においしかった。
「加工品販売はまだまだ軌道にのっているとは言い難い」とはいうものの、
生野菜だけでない加工品販売の可能性を実践することで模索している。
5:サラリーマン時代よりはるかに健康的な生活
しかしスタッフはわずか3人。奥さんは小さな子どもが2人いて子育ても大変。
畑仕事や配達仕事を一人で担っているので大変なのではないかと聞いたら、
「サラリーマン時代よりはるかに健康的な生活ですよ」と笑って話してくれた。
朝5時に起きて1~2時間、事務作業をした後、7時から日中はほぼ畑での仕事。
夕方から夜にかけて配達を行い、20時前後には家に戻り、
その後は家族と過ごし、23時ぐらいには寝るという生活だという。
「会社員時代は忙しくて野菜を食べる暇すらなかった。
それに何より会社員時代と違い、自分ですべて決めて自分のペースで仕事できるのがいい」
「でも台風とか大雨とか天候リスクもあって大変ではないんですか?」と聞くと、
「確かに農業って理不尽な想定外のリスクもあって大変だし難しいけど、
でもだからこそやりがいもあって楽しいんだと思います」と軽やかに答える。
「手間はかかりますが、育てている野菜は多品目あるので、
どれかがダメになってもどれかが大丈夫ということもあります。
また大手1社と取引しているわけではなく、様々な販売先があるので、
どこかの注文が減ってもそれほど大きな影響はないんです。
リスク分散ができているのがうちの農園の強み」と語る。
柴海さんは大学時代「種テロリスト」というあだ名をつけられていたという。
「少しでも余っている畑スペースがあると、
すぐにいろんな種をいっぱい植えるのでそんなあだ名で呼ばれてました」
愛読書は種のカタログ。
ついつい種を買いすぎてよく妻から怒られるという。
柴海さんは野菜の種を植えるだけでなく、
様々な販路開拓や商品開発という名のの種をまくこともマメにやっているからこそ、
20代の若さで農家として独立起業し、
28歳の若さで様々な販路を開拓してやっていけるのだと思う。
「とにかく野菜を育てるのが好き。だから野菜作りは飽きない」
好きだからこそ大変でもできる農業。
柴海さんの生き方・働き方は実にすがすがしかった。
・柴海農園ホームページ
http://www.shibakai-nouen.com/
・柴海農園のオンラインショップ
https://munouraku.stores.jp/#!/
※柴海農園で畑仕事をしてみたい方やスタッフとして働きたい方は、
柴海さんまでお問い合わせください。
TEL:090-4929-8087 mail:info@shibakai-nouen.com
・生き方・働き方インタビュー
http://www.kasako.com/life1.html
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