日本では5年も前から、すでに自動車は売れていない。
国内の新車販売台数は5年連続減少している。
つまり日本に限っていえば、
別に金融危機が起きようが起きまいが、
自動車離れは間違いなく進んでいるのだ。
また日本で新車販売が減少している背景には、
日本車の性能が“優秀”だからだ。
乗用車の平均耐用年数は11.67年で、
10年前に比べて2年も延びている。
長持ちするいい車だから、買い換える頻度が減っている。
技術の進歩で耐用年数が延びているなら、
本来、喜ぶべきことだが、
企業の利益や経済成長を考えた時には、
マイナスに働いてしまう。
まさに経済成長と社会の幸福が一致しない典型的な例だろう。
経済成長重視なら、わざとすぐに壊れる車を売った方が、
買い換え需要が起きるということだ。
これはやや極論だけど、トヨタ自動車なんて国内では、
自らの足を食って生きている、
タコ足商売に過ぎないんじゃないかとも思える。
だって従業員が自分で作った車を、
自分たちや家族や親戚で買い支えているわけでしょう。
車を作る工場に通うために。
それって極論すれば商売じゃない。
何万人もの従業員が、車でしか通えない工場に働きに行くために、
自社の車を買って喜んでるって、まったくおめでたい話。
たとえば私が自分の本を自分で1000冊買って、
「1000冊売れて印税が入ってきました!」
って喜んでも、それは自分の金を回しているだけに過ぎないわけで、
それを売れたとはいわないし、
商売としては成り立たないわけです。
そういう比率が異様に多いのが、
トヨタを筆頭とする自動車産業ではないか。
じゃあなぜ自動車が今まで好調だったかというと、
海外で売れていたから。
たとえば新興国なら、まだ自動車を持っていない人はいっぱいいる。
だけど高度経済成長しているから、
給料が上がって持っていない車を買えるようになる。
だから海外販売台数は伸びて、
それで荒稼ぎしているわけです。
でも日本人だって高い値段の新車を、
おいそれと買えないように、
金融危機で景気が悪くなれば、
車がなくて車が欲しい人でも、
買うのをためらうのは当たり前の話で、
売れなくなるのは当然なわけです。
さらに、先進国ではこれからカーシェアリングが、
どんどん進んでいく可能性がある。
カーシェアリングとは1台の車を、
複数の人で共有し合うこと。
レンタカーに似た仕組みだと思っていただければいい。
地球環境的にも、家庭のコスト負担を考えても、
よほど頻繁に車を使う人以外は、
わざわざ車を保有しなくても、
レンタカーでいい、カーシェアリングでいい、
という人が今後どんどん増えれば、
ますます車は売れなくなるだろう。
つまり、自動車産業は、
そもそも先行きの明るい産業ではないということだ。
今は海外で売れているとはいえ、
欲しい人が買ってしまい、
耐用年数が10年以上もあるなら、買い換え頻度は低く、
爆発的に車が売れる時代は、
日本国内のようにいずれこなくなる。
自動車がなくなることはないとは思うが、
20年、30年先を考えた時、
自動車産業が果たして有望な産業であるとは、
私には思えない。
そんな業界に終身雇用を期待して、
仮に社員として就職できたとしても、
中年になってリストラされ、路頭に迷うのがオチだろう。
そんな産業に派遣切りするなとか、
終身雇用せよなんて無理な話。
100年に1度の金融危機だから、
海外では車は売れなくなったが、
日本では金融危機に関係なく、
すでに車は売れなくなっているという事実は、
頭の片隅に置いておいた方がいいだろう。
最期の頼みはガソリン車の販売禁止と、
電気自動車の買い換え需要のみ。
それであと10年ぐらいはもつかもしれないが、
いずれにせよ自動車産業は厳しい業界ではないだろうか。
そもそも電気自動車になれば、
自動車メーカーだけじゃなく、
電機メーカーだって参入してくる可能性があるわけで、
競争はより一段厳しくなるんじゃないか。
アメリカのビック3が潰れるように、
日本の自動車メーカーも潰れないにせよ、
斜陽産業になるきっかけとなったのが、
今回の金融危機で明らかになっただけではないだろうか。